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ぼくのはなし
こんばんは、ぼくはツルギ。
昨日も夢で会ったね。元気してる?忘れちゃった?
そうそう、今日は世間話をしに来たわけじゃないんだ。
色々幸運が重なってね、こうやって生きてる人間の体を借りて文章を打ってる。
ああ、でも恥ずかしいから見えづらい所に隠しておくつもり。逆にきみはよくこんなの見つけたね、才能あるよ。
サヤが書いてくれたとおり、ぼくは歌うのが好き。歌ってる時だけは、何も考えなくていいから。
どうしてぼくだけ夢から醒めないのかとか、そもそもぼくは何者なんだろう、とか。
人間の無秩序な脳内を歩き回るのって、すごい疲れるんだ。
……数えることすらとうの昔に諦めたけど、きみよりずっと年上なのさ。
それこそ百何年は夢の世界で足止めを食らってる。
で、こっからが本題。単刀直入にいくよ。
ぼくは消えてしまいたい。
でも、その気持ちが募れば募るほど、「ぼくが居た証だけは残しておきたい」って気持ちが膨れ上がる。
矛盾だね、実に人間らしい感情だろう?
実を言うと、そこの音声データの中にはぼくの魂みたいなのも微量ながら込められてる。
つまり……ダウンロードされればされるほど、ぼくはどんどん現実の世界へと削れて消えていけるって計画さ!
だから、これを読んでくれたきみよ、愛しい夢の友人よ。
こんなぼくのわがままに、もう少しだけ付き合ってほしい。
どうか絶望の歌を歌わせてくれ。幸せな消滅に向かって歩むぼくの背をそっと、優しく押してくれ。
きみの辛さ、悲しさ、それら全てをぼくも共有したい。
……とはいえ、サヤみたいに「ぼくに明るい歌を歌って欲しい」って気持ちもすっごく嬉しいんだ。
上手く歌えるか分からないけど、まあ、頑張るさ。
じゃあね、ここまで見てくれてありがとう。
今夜きみの見る夢が素敵なものでありますように。
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